2021-02-24
トップに立つ人の発言としてはお粗末すぎた。しかし、彼を非難したり、辞職に追い込んで、事が済むわけではない。むしろ、事は自分自身に関わること、改めて彼の発言の背景にあると思われる事実に目を向ける必要を思い知らされた。
2月13日付毎日新聞のネット記事によると国内のオリンピック・パラリンピック関連団体と五輪で開催される33競技の各中央競技団体における女性理事比率の平均は、16.6%。森氏の差別発言があったJOCの評議委員会は、63人中2人だけの3.2%。
組織の構成員が男性中心であるとき、男性は、男性中心の発言になりやすい(世はこのような発言を「男の本音が出た」と評することもある。)。また、女性は、異分子として扱われやすい。女性が自分たちの見解と異なることを表明すると、その内容の吟味以前に「これだから女は」と偏見丸出しのこともある。個人の見解としての評価ではなく、女性という属性そのものに対する評価となることがある。
ことは男女平等問題に限られない。日本人と外国人の関係においても、同様のことが見受けられる。外国人は異分子として排斥する風潮だ。
「多様性と調和」が東京大会の核となるビジョンの一つだとか。しかし、「多様性」を文字通り受け止め、ジェンダー意識を遠ざけて、望ましい形に持っていくことは、口で言うほど生易しいことではない。
女性の一流のアスリートでさえ、結婚を機に引退し、出産後は、家庭にとどまり、現場に指導者として復帰する、という話は聞かない。出産は女性にしかできない。その違いを乗り越えて、男女間の実質的平等の実現を図ることは、なかなか大変なことではある。
森発言を声高に非難するマスコミ業界においてすら、全国の新聞社38社の役員319人中、女性はたったの10人(19年4月時点新聞労連調査)、毎日新聞社の役員も0人。
まずは身近なところで、ジェンダー意識をチェックしていきましょうか。